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こちらでは、当事務所が実務上経験した出来事に関して、雑感を
交えながら、ご紹介させて頂きます。
但し、以下に記載した当時の裁判所・法務局の取扱いが現時点に
おいては、変更されている場合などもありますので、その点をご留
意の上、ご覧下さい。
1.所有権一部移転(A→B)、2.根抵当権設定登記の連件申請をしたところ、東京法務局○○出張所から、1の登記の申請に使用した売主Aの印鑑証明書は、2の登記申請の設定者Aの印鑑証明書として援用出来ないので、もう1通Aの印鑑証明書を添付するようにとの電話を受けました。
当方の「なぜ援用出来ないのですか?」との問いに、調査官の「登記の目的を異にするので、添付の趣旨を異にするから」との回答。
そこで「そもそも、印鑑証明書添付の趣旨は、①登記義務者の申請意思確認のためか、②書面の真正を担保するためである。従って、この①と②の添付書面として使用した印鑑証明書間の援用を、添付の趣旨が異なるという理由で認めないことは一応の理屈として理解できるが(同じものを2枚付けさせるという馬鹿げた実務の弊害ではある)、①の場合の条文上の要件は、原則として「所有権の登記名義人が登記義務者となるとき」であり、同一の登記の目的でなければならないという限定はない。その意味では、今般の当方の1及び2の申請は、ともに①の趣旨であって、添付の趣旨を異にするものではない。」と反論したところ、登記は補正なく完了しました。
当該法務局が、書面の援用を認めない理由の「添付の趣旨を異にする」を誤って解釈した事例です。平成17年の不動産登記法改正で印鑑証明書の原本還付を認めなくなったことから、生じた弊害ですが、同じ証明書を、申請人の負担も顧みず、平気で2枚でも3枚でも付けさせることに何の疑問も感じない行政のなせる業です。立法担当者もそんな細かいことまで気がまわらなかったのでしょうが、証明力の点でも全くの無駄であり、国民目線の行政を目指して頂きたく、法務省には運用上なんとか改善して頂きたい問題です。
我々の業界の商業登記の世界では非常に有名なK先生からメールを頂きました。
曰く、K先生がまだ司法書士となられる以前に私が行った①売主の抵当権抹消登記(原因日2/4)②売主から買主であるK先生への所有権移転登記(原因日1/31)が連件でなされているが、これはたまたま為された登記なのか?とのご質問でした。
K先生は、当時、実体には合致するが(当時K先生の友人の売主が返済した公的機関は、返済と同時に抹消書類を交付して貰えず、しかも委任状の原因日は、返済日ではなく書類の交付日を記入して来ました。)、登記原因が上記のような依頼が出来るのか不安だったが、私が自信をもって「可能です。」と応えたので、専門家に委ねようと決断したのだが、今同じ司法書士になってみて、やはり理由が分からないとの事でメールを頂いたのでした。
この問題の回答は、理論的には、「実体法上の登記権利者・登記義務者と登記法上の登記権利者・登記義務者は、異なるものである」と答えることが出来ます。つまり、実体法上、1/31に、本物件の所有権が売主から買主に移っていたとしても、買主が登記法上、現実に登記を申請できる抵当権抹消登記の申請適格者たる登記権利者になるためには、登記簿上、登記権利者として形式的に表示されることが必要だからということです。たとえ、連件であっても、②の登記が為されていない以上、①の登記時点においては、売主を抵当権抹消登記の登記権利者と扱わざるを得ないというのが登記法上の登記権利者という概念なのです。
ある有料介護施設に居住する資産家のご主人から、現在空家となって10年が経つ自宅の有効利用を考え、奥様の後見開始の申立手続を依頼されました。(*婚姻20年の配偶者贈与の特例を使って以前奥様に自宅の持分を移転したため、現在自宅は夫婦共有名義になっています。)
後見人候補者について伺うと、私ももう90歳なので、一人娘に成年後見人になって貰いたいとの希望を伺いました。最近、親族後見人によって被後見人の財産が不当に侵害される事件が多発しており、職業後見人が選任される可能性がある旨の話をすると、身内のことはあまり他人に関わって貰いたくない。それに妻の預金は、11年前に妻がアルツハイマー型認知症を発症してからは手をつけていないし、これからもつけるつもりはないとのことで、毎月50万円以上かかる施設代等は入居してからの10年間そうだったが、これからも全て自分が負担する。私の預金は妻の6倍以上あるので心配もない。気になるのは、空家にしたままの自宅だが、賃貸一括管理の業者に依頼してアパートでも立てれば、相続対策にもなるし、家賃も入ってくるので、居住用不動産処分の許可申立も一緒にして貰いたいとの事でした。
お話の状況なら、親族による財産侵害の危険はないので、一人娘を候補者にして後見開始の申立をしてみましょうと依頼を引き受けたところ、審問の面接官からは、これだけの資産(約4000万円)がある場合、親族後見人が選任がされるケースは100%ないと一刀両断。
親族後見人による被後見人の不当な財産侵害の防止という趣旨は、理解出来ますが、今般のケースは、10年以上被後見人の預金を引き出しておらず、年金等によって貯まる一方なので、このような金額になったものであり、この預金ついては、これからも使用するつもりもないし、親族は十分な資産を持っているので、たとえ一人娘が後見人に選任されても、その趣旨に反しないと、面談で訴えた事柄を再度、上申書にして家裁に提出しました。
被後見人の預金を一切使用しないと言っているにも関わらず、後見支援信託の利用は?とか
マニュアルしか頭にない担当官とのやりとりを経て、後見監督人を付けるとのことで妥協し、親族後見人の選任をなし得ました。ところが、この選任された後見監督人は、家裁の意向を受けてなのか自宅の有効利用は、被後見人が死ぬまで一切認めないと依頼者及び後見人である娘に通告して来ました。
90歳の依頼者はこれじゃ何のために申立をしたのか意味がないと嘆き、後見人である娘さんは、母が死なないと何も出来ない。母が死なないと・・・いつの間にか母の死ばかり考えてしまう自分に嫌悪感を抱き、精神的にダメージを受けてしまいました。
裁判所や我々司法書士の任意団体であるリーガルサポートにおいては、成年後見制度が、あくまで成年被後見人のための制度であって、親族や家族のための制度ではないからという理由で、例えば、相続税対策なども考慮した、現状空家となっている成年被後見人の自宅の有効利用などには非常に消極的な様です。
また、積極的な行動に出るより消極的に運用にした方が安全であるのも分かりますが、相続人が被後見人の財産を食い物にする例外を除き、多くの場合、家族が被後見人の人生を支えているのであり、被後見人もまた家族の幸せを第一に考えているのであるから、ある程度家族の希望に沿った運用をしたとしても、それが被後見人のためにならないとは一概にはいえないのではないでしょうか。
ちなみに、本件に関する相続税対策は、被後見人の配偶者が90歳であることから、相続人のためばかりでなく、被後見人のためにもなること、また被後見人の配偶者には、十分過ぎる資産があり、仮に事業による失敗があったとしても被後見人の資産に影響を及ぼすこともないこと、そもそも、被後見人には、自身が持分を取得した配偶者贈与に掛かった費用・税金・これまでの固定資産税の支払を配偶者が行ってきたことから所有の意識が見られなかったこと、親族の最大の懸念である近隣住民の苦情にも対処できること等の理由を記載し、当初、後見監督人の同意書なく居住用不動産処分の許可申立をしたところ、途中で後見監督人の同意を得、何とか許可を得ることが出来ました。
令和2年4月1日から改正私立学校法が施行され、不動産の所有権の移転等の行為が学校法人と理事との利益相反取引に該当する場合には、当該行為の不動産登記の申請書に、それまでの所轄庁の特別代理人選任書に代わり、学校法人の理事会議事録を添付することになりました。
問題となるのは、学校法人の役員の登記事項は、理事長のみであるため、上記理事会議事録に記名・押印のある理事の真正をどのようにして証明するか?です。
この問題は、組合等登記令に登記手続が規定されている法人、例えば医療法人、社会福祉法人においても、同様に生じます。
この理事の証明をどこで行うのか?の証明機関について、徳島方式(証明機関:所轄庁=県知事)VS京都・鹿児島方式(証明機関:当該法人)などと呼ばれて、全国的にも、法務局における取扱いが異なっています。
京都方式は、理事の証明を、当該理事選任時の社員総会議事録を添付することにより、又鹿児島方式は、理事長による現理事者に相違ない旨の証明書を添付することにより行うものです。
これに対し、徳島方式は、県知事に対し、①当該理事就任の社員総会議事録の写し②利益相反取引の契約書を添付して、当該法人の理事者の証明願を提出し、県知事の証明書を取得してから、それを法務局の登記申請書に添付するものです。
この徳島方式の扱いは、平成28年9月1日の改正医療法の施行に伴い、導入されたものの様ですが、この扱いは、既に改正法によって当該利益相反取引を許容する機関でない県知事が、当該法人の理事者は誰であるかの証明に過ぎない申請に、利益相反取引の契約書を添付させることによって、実質、従前の取扱いを継続するものであり、医療法を改正し特別代理人の選任を不要とした法の趣旨を完全に没却するものであると思われます。
また、徳島県医療政策課が参考資料として掲げている平成3年8月9日民三第四436号民事局第三課長依命回答による、定款の規定によって理事会において選任された理事長に代わり当該法人を代表する理事についての所轄庁の証明書も、添付書類の種類としては、不動産登記令第7条第1項第1号ロの法人の代表者の資格を証する情報についてのものであり、ここで問題となっている理事者が誰であるかの証明は、不動産登記令第7条第1項第5号ハの登記原因について第三者が許可し同意し承諾したことを証する情報の一部として添付するものであるため、その性質を異にするものです。
思うに上記三課長依命回答がなされた平成3年当時は、組合等登記令に登記手続が規定されている法人の利益相反行為については、原則的に所轄庁の特別代理人の選任を要していた時代であり、それとのバランスが考慮された先例であると思われます。
平成18年、多くの弊害があった公益法人の改革が行われ、平成20年12月1日、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律は、許可主義から準則主義への流れの中で施工されました。そして、医療法においては平成28年9月1日、私立学校法においては令和2年4月1日改正法が施行され、この法律を準用しています。
当方が、学校法人の理事長が代表取締役を務める株式会社が債務者となる学校法人所有の不動産への抵当権設定登記を、予め神奈川県の私学振興課に理事の証明書の発行を行っていない旨の確認を取った後、理事会議事録(理事全員の印鑑証明書付)及び理事長による理事会当日の理事の証明書を添付して申請を行ったところ、法務局では、上記三課長依命回答を根拠に、理事の証明書を発行しない私学振興課に対し、発行を求める要請をしたようです。
(結果としては、時間を要しましたが、当方の申請のままで登記は完了致しました。)
公益法人改革の準則主義への流れに沿って、この問題を解決するためには、時間を遡って、所轄庁にその扱いの是正を求めるのではなく、むしろ、組合等登記令の登記事項に「理事の氏名」を加えるなどの法務省令の改正を行うべきではないかと考えます。